SFP-10G-SR-X と SR-I の違い — 動作温度(EXT / IND)で選ぶ Cisco の 10G 光モジュール

2026.10.02|選定ガイド|潤徳商事株式会社

屋外の収容盤や空調のない機械室に 10G の光リンクを引くとき、見積書や機器構成に「SFP-10G-SR-X」「SFP-10G-SR-I」という型番が出てくることがあります。SFP-10G-SR と何が違い、どちらを選べばよいのか。Cisco が公開しているデータシートをもとに整理します。

結論 — 違うのは「動作温度」と「対応する信号」

  • SFP-10G-SR-X は拡張温度(EXT:−5〜85℃)、SFP-10G-SR-I は産業用温度(IND:−40〜85℃)の 10GBASE-SR です。SFP-10G-SR と SFP-10G-SR-S は商用温度(COM:0〜70℃)です。
  • 波長 850nm、OM3 で 300m・OM4 で 400m という到達距離と、消費電力 1W は4型番とも同じです。
  • -X / -I は、10GBASE-SR に加えて 10GBASE-SW と OTU2e(OTN)にも対応するマルチレート品です(SR-X のバージョン 1 は 10GBASE-SR のみ)。SR-I は、無線基地局のフロントホールで使われる CPRI のレートにも対応しています。
  • 4型番とも 10GBASE-SR なので、Ethernet として使う場合は、片側が SR-X、もう片側が SR でも規格上は対向接続できます。
型番温度区分動作温度対応する信号消費電力
SFP-10G-SR-SCOM0〜70℃10GBASE-SR(FCoE 非対応)1W
SFP-10G-SRCOM0〜70℃10GBASE-SR1W
SFP-10G-SR-XEXT−5〜85℃10GBASE-SR / 10GBASE-SW / OTU2e
(バージョン 1 は 10GBASE-SR のみ)
1W
SFP-10G-SR-IIND−40〜85℃10GBASE-SR / 10GBASE-SW / OTU2e
CPRI(レートオプション 3〜8)
1W

SR と SR-S の違い(FCoE への対応)は「SFP-10G-SR-S とは」で解説しています。本稿では温度の違いに絞って見ていきます。

COM・EXT・IND — 3つの温度区分

Cisco のデータシートは、光モジュールの動作温度を次の3つに区分しています。

区分名称動作温度
COMCommercial(商用温度)0〜70℃
EXTExtended(拡張温度)−5〜85℃
INDIndustrial(産業用温度)−40〜85℃

保管温度はどの区分も −40〜85℃ で共通です。差が出るのは動作中の範囲で、EXT は COM より上限が 15℃ 高く、下限も −5℃ まで広がります。IND は下限が −40℃ まで下がります。

判断で気をつけたいのは、モジュールが置かれる場所はスイッチの筐体の中だという点です。ポートの周辺は機器自身の発熱で室温より高くなりやすく、屋外盤では日射でさらに上がります。外気温ではなく、夏と冬に盤内の温度がどこまで振れるかを基準に区分を選びます。

Cisco 10G SFP+ の動作温度の区分図。COM(0〜70℃)に SR-S・SR・LRM・LR-S・LR・ER-S・ER・ZR-S・ZR、EXT(−5〜85℃)に SR-X・LR-X・T-X、IND(−40〜85℃)に SR-I・LR10-I・ER-I・ZR-I・BXD-I / BXU-I・BX40D-I / BX40U-I が該当する
図:Cisco 10G SFP+ の温度区分と該当する型番(Cisco 10GBASE SFP+ Modules Data Sheet より作成)

Cisco 10G の温度品 — -X / -I の型番一覧

EXT・IND の型番は SR だけではありません。データシートで EXT・IND に区分されている 10G の型番は次のとおりです。

型番区分規格・用途
SFP-10G-SR-XEXT10GBASE-SR / SW、OTU2e(マルチモード)
※バージョン 1 は 10GBASE-SR のみ
SFP-10G-LR-XEXT10GBASE-LR / LW、OTU2e(シングルモード)
SFP-10G-T-XEXT10GBASE-T(CAT6A ケーブル、30m まで)
SFP-10G-SR-IIND10GBASE-SR / SW、OTU2e、CPRI(マルチモード)
SFP-10G-LR10-IIND10GBASE-LR、CPRI(シングルモード)
SFP-10G-ER-IIND10GBASE-ER / EW、OTU2e(シングルモード)
SFP-10G-ZR-IIND10GBASE-ZR / ZW、OTU2e(シングルモード)
SFP-10G-BXD-I / BXU-IIND1芯双方向(BiDi)・10km、CPRI(バージョン -02 が対応)
SFP-10G-BX40D-I / BX40U-IIND1芯双方向(BiDi)・40km

消費電力は、SR-X・SR-I・LR-X・LR10-I が 1W、ER-I が 1.5W、ZR-I が 2W、銅線の T-X が 2.5W です。型番を探すときに見落としやすいのは、次の2点です。

  • 産業用温度の LR は SFP-10G-LR10-I — データシートの消費電力の表(Table 8)の温度区分欄で、IND に分類されている LR はこの型番です。拡張温度(EXT)の LR は SFP-10G-LR-X です。
  • SFP-10G-ZR-I は −40〜−28℃ では光伝送がサポートされない — −40℃ からの起動(コールドスタート)には対応し、モジュール自体は動作しますが、この温度域では光信号の伝送はサポートされないと注記されています。寒冷地で使う場合は、この条件を前提に設計します。

どんな場所で -X / -I を選ぶか

  • 空調のあるサーバルーム・通信室 — 商用温度(COM)の SR / SR-S で足ります。
  • 屋外の収容盤、空調のない機械室・倉庫 — 夏に盤内が 70℃ 近くまで上がる、または冬に 0℃ を下回っても −5℃ までに収まるなら、拡張温度の SR-X が候補です。
  • 寒冷地の屋外、工場・プラントの制御盤 — −5℃ を下回るおそれがある場所は、産業用温度の SR-I を選びます。
  • 無線基地局のフロントホール(CPRI) — CPRI のレートに対応しているのは SR-I・LR10-I・BXD-I / BXU-I(バージョン -02)です。
  • OTN(OTU2e)の伝送装置 — OTU2e に対応する SR-X(バージョン 1 を除く)・SR-I・LR-X・ER-I・ZR-I から選びます。

あわせて、スイッチ本体の動作温度も確認してください。モジュールだけを温度品にしても、装着する機器の仕様範囲を超える場所では使えません。どの機種・OS バージョンでどの型番が使えるかは、Cisco が互換性マトリクスで型番ごとに公開しています。

温度は DDM で確かめられる

Cisco の SFP+ は、業界標準の SFF-8472 に準拠したデジタル光モニタリング(DOM / DDM)に対応しています。モジュール内部の温度・電源電圧・バイアス電流・送受信の光パワーを、スイッチから読み出せます(多くの機種で show interfaces transceiver)。

盤内の温度が分からない場合は、今使っているモジュールの温度を夏場に記録してみるのが確実です。しきい値の考え方は「DDM活用入門」で解説しています。

互換モジュールで温度品を選ぶときの注意

  • 温度は数値で確認する — 「産業用」「I-Temp」といった呼び方ではなく、仕様書の動作温度(例:−40〜85℃)で確認します。
  • コーディングは装着先に合わせる — SR-X と SR は光学的に同じでも、スイッチにどの型番として認識させるかは EEPROM のコーディングで決まります。機種名と OS バージョンを伝えて手配します。
  • 保証の前提は仕様範囲内での使用 — VREN の保証規定でも、仕様範囲外の温度での使用は保証の対象外としています。

VREN の 10GBASE-SR(SFP-10G-SR 互換・SFP-10G-SR-S 互換)は、動作温度 0〜70℃ の商用温度品です。屋外盤など温度条件のある場所でお使いの場合は、設置場所の想定温度と装着先の機種名を互換性確認窓口にお知らせください。対応できる製品をお調べしてご案内します。

よくある質問

SR-X と SR を対向でつないでも大丈夫?

どちらも 10GBASE-SR なので、Ethernet として使う場合は、片側が SR-X、もう片側が SR や SR-S でも規格上は対向接続できます。温度区分は、それぞれのモジュールが置かれる場所に合わせて選びます。

室内で SR-X を使っても問題ない?

使えます。EXT(−5〜85℃)は COM(0〜70℃)の範囲を含んでいます。ただ、空調のある室内であれば COM の SR / SR-S で要件を満たせます。

SFP-10G-SR-X= の「=」は何?

スペア(単品)として発注するときの品番表記で、モジュールそのものは SFP-10G-SR-X と同じです。詳しくは「SFP-10G-SR-S とは」で解説しています。

到達距離は SR と同じ?

同じです。データシートの距離表では SR・SR-S・SR-X・SR-I がまとめて記載されており、OM3 で 300m、OM4・OM5 で 400m、OM2 で 82m、OM1 で 33m です。ファイバ別の考え方は「SFP-10G-SR 互換モジュール選定ガイド」で解説しています。

まとめ

  • -X は拡張温度(−5〜85℃)、-I は産業用温度(−40〜85℃)。SR と SR-S は商用温度(0〜70℃)。
  • 波長・距離・消費電力は4型番とも同じ。違いは温度範囲と、-X / -I のマルチレート対応(10GBASE-SW・OTU2e。SR-X のバージョン 1 を除く。SR-I は CPRI も)。
  • 産業用温度の LR は SFP-10G-LR10-I。ZR-I は −40〜−28℃ で光伝送がサポートされない。
  • 区分は外気温ではなく盤内の温度で選び、スイッチ本体の動作温度もあわせて確認する。

参考資料

本記事は Cisco Systems が公開している「Cisco 10GBASE SFP+ Modules Data Sheet」(2026年10月時点)に基づく一般的な技術情報です。仕様・対応機種は変更される場合があります。導入前に最新のデータシートと互換性マトリクスをご確認ください。記載の社名・製品名は各社の商標です。