光リンクを設計するとき、送信側の出力や到達距離には注目が集まりますが、実際にリンクが成立するかどうかを決めているのは受信側(光レシーバ)です。しかもトラブルの多くは受信側で起きます。本稿では、光レシーバを選ぶとき・仕様書を読むときに押さえるべき3つの数値と、その使い方を整理します。
光レシーバは、ファイバを通って届いた光信号を電気信号に戻す部品です。SFP+やQSFPといった光トランシーバの内部では、送信側のTOSA(レーザー)と受信側のROSA(受光素子+増幅回路)が一体になっています。つまり実務では「レシーバ単体を選ぶ」場面は少なく、トランシーバを選ぶ=送信と受信をセットで選ぶことになります。ただし仕様を読み解くうえでは、受信側の数値を独立して理解しておく必要があります。
最も基本となる数値が受信感度です。これは「これより弱い光では受信できない」という下限値で、dBm(デシベルミリワット)で表されます。ここでよく混乱が起きるのですが、数値が小さい(マイナスが大きい)ほど高感度です。
受信感度が3dB良くなると、単純計算でファイバ損失を3dB多く許容できます。これは1310nm帯なら数km分の余裕に相当します。
見落とされがちなのが上限側です。光レシーバには飽和レベル(最大受信光パワー)があり、これを超える強い光が入ると波形が潰れてエラーが出ます。感度と飽和レベルの幅をダイナミックレンジと呼びます。
実際に起きやすいのが、長距離用モジュールを至近距離で使ってしまうケースです。たとえばERやZRのモジュールを同じラック内で数メートル接続すると、光が強すぎて通信できないことがあります。この場合は光アッテネータ(減衰器)を入れて意図的に光を弱めます。「距離が短いのにリンクが不安定」というときは、まず過大入力を疑ってください。
受信感度を左右するのが受光素子の種類です。大きく2種類あります。
選定の観点では、必要な距離が先に決まり、それに応じて素子が決まると考えるのが実務的です。短距離にAPDは過剰でコスト高、長距離にPINでは届きません。
受信感度の数値だけを見ても、リンクが成立するかは判断できません。送信光出力 − 経路損失 ≧ 受信感度 という関係が成り立ち、さらに3dB程度の余裕が残るかを確認します。経路損失にはファイバ損失(距離×dB/km)に加え、コネクタ1接続あたり約0.5dB、融着点の損失が積み上がります。詳しい考え方は「10GBASE-SR と LR の違いと使い分け」のリンクバジェットの章をご覧ください。
設計値の確認は計算でできますが、実際に届いている光の強さはDDM(デジタル診断モニタリング)で読み取れます。スイッチのコマンドでRX Powerを確認し、その値が受信感度と飽和レベルの間に、十分な余裕をもって収まっているかを見ます。運用中に受信光レベルが少しずつ下がっていく場合は、コネクタの汚れやファイバの劣化が疑われます — 障害になる前に気づけるのがDDMの利点です。使い方は「DDM活用入門」で解説しています。
VELRAの光トランシーバは全機種DDMに対応しており、受信光レベルを常時モニタできます。10G〜40Gのラインナップから、距離とファイバ種別に合わせてお選びいただけます。「この距離・この構成で光が足りるか」といったリンク設計のご相談も承ります。