「カタログでは10km対応。実際の敷設は8km。だから届く」— この判断で進めて、いざ繋いだらリンクが上がらない。あるいは上がっても不安定。光リンクの設計でよくある失敗です。規格上の到達距離は理想条件での上限値であり、実際に届くかどうかはリンクバジェットで確かめます。本稿では計算の手順を、具体的な数字で追いかけます。
難しい計算ではありません。手順は2ステップです。
残りが3dB以上あれば、経年劣化や温度変化を吸収できる余裕があると判断します。ここで使う数値は、すべてモジュールの仕様書に載っています。
実際の数字で追ってみます。条件は次のとおりです。
まず予算を出します。−3.0 −(−14.4)= 11.4 dB。これが使える光の量です。
次に損失を引きます。
11.4 − 6.0 = マージン 5.4 dB。推奨の3dBを上回っているので、この構成は成立すると判断できます。
上の例で注目していただきたいのが、コネクタ損失 3.0 dB がファイバ損失 2.8 dB を上回っている点です。8kmという距離があってなお、接続点のほうが多く光を食っています。
1接続あたり約0.5 dBは小さく見えますが、パッチパネルを経由するたびに2箇所ずつ増えていきます。「距離は短いのにリンクが不安定」という症状の多くは、経路上の接続点の多さが原因です。設計時は距離だけでなく、経路図を描いて接続点を数えてください。
ファイバ損失は波長によって変わります。目安は次のとおりです。
波長ごとの使い分けは「光トランシーバの波長早見表」にまとめています。
40kmを超えるような長距離では、光の強さ(パワーバジェット)だけでなく波長分散も検討が必要になります。光には波長ごとにわずかな速度差があり、距離が延びるほどパルスの波形が広がって、隣のビットと重なりエラーの原因になります。
ERやZRといった長距離モジュールには分散耐力の仕様値が定められていますので、長距離を検討される場合は仕様書の分散ペナルティも併せてご確認ください。SFP-10G-ER(40km)やSFP-10G-ZR(80km)が該当します。
バジェットは足りているかだけでなく、過剰でないかも確認します。長距離用モジュールを短距離で使うと、受信側の飽和レベルを超えて逆にエラーが出ます。ERやZRを数百メートルで使うようなケースがこれにあたり、光アッテネータで意図的に減衰させる必要があります。詳しくは「光レシーバの選定ガイド」をご覧ください。
設計値の確認は計算でできますが、実際に届いている光はDDM(デジタル診断モニタリング)で読み取れます。スイッチのコマンドでRX Powerを確認し、受信感度に対して十分な余裕があるかを見てください。
運用開始時の値を記録しておくと、後から比較できます。受信光レベルが少しずつ下がっていく場合は、コネクタの汚れやファイバの劣化が疑われます — 断線してから慌てるのではなく、予兆の段階で気づけるのがDDMの価値です。使い方は「DDM活用入門」で解説しています。
VELRAでは全機種DDMに対応した光トランシーバをご用意しています。型番の適合確認とあわせて、「この距離・この経路で光が足りるか」といったリンク設計のご相談も無料で承ります。導入前の検証用サンプルもご提供しています。