光アッテネータ(減衰器)はいつ必要か — ER・ZR を短距離で使うときの「受光過大」と対策

2026.09.24|技術コラム|潤徳商事株式会社

リンクバジェットの計算では「光が足りるか」を確かめました。本稿はその反対側、「光が強すぎないか」の話です。40km・80km 向けの長距離モジュールを短い区間で使うと、受信側に光が入りすぎて、エラーやリンクの不安定を招きます。このとき使うのが光アッテネータ(減衰器)です。

結論 — 判定は引き算1回

  • 判定式:最大送信光出力 − 伝送路の最小損失 ≤ 受信上限(オーバーロード)。満たさなければ、足りない損失を減衰器で補います。
  • 10G の SR と LR は仕様上、受光過大になりません。最大送信光出力が受信上限を超えない設計だからです。
  • 注意が必要なのは ER と ZR。Cisco のデータシートでは、ER は 20km 未満で 5dB、ZR は 5km 未満で 15dB、5〜25km で 10dB、25〜45km で 5dB の減衰器を指定しています。
  • 減衰器は受信側に付け、設置後は DDM で受光レベルを確認します。
規格別に、伝送路に必要な最小損失と許容最大損失を示した図。10GBASE-SR と LR は減衰器不要、10GBASE-ER は 5.0〜11.1dB、10G ZR は 11.0〜24.0dB、25GBASE-ER は 10.0〜18.0dB。Cisco 指定の減衰器は ER が 20km 未満で 5dB、ZR が 5km 未満 15dB・5〜25km 10dB・25〜45km 5dB
図:受光過大の判定と、Cisco が指定する減衰量(データシート値より作成)

なぜ「強すぎる」とダメなのか

受信器には、正しく受けられる光の強さに下限と上限があります。下限が受信感度、上限が受信上限(オーバーロード)です。上限を超えると受信素子が飽和して信号の波形が崩れ、ビット誤りが増えます。リンクは上がるのにエラーカウンタが増える、リンクが断続的に落ちる、といった形で表れます。

長距離用のモジュールは、遠くまで届けるために送信光出力が大きく、受信側も弱い光を拾える高感度の設計です。たとえば ZR は −24dBm という弱い光まで受けられる一方、受信上限は −7dBm と低めです。距離が短いと、この上限を簡単に超えてしまいます。

規格ごとの「必要な損失の範囲」

送信光出力と受信範囲から、伝送路に最低限必要な損失許容できる最大損失が決まります。Cisco のデータシート値で計算すると次のとおりです。

規格(Cisco 型番)送信光出力受信範囲(感度〜上限)必要な最小損失許容最大損失
10GBASE-SR
SFP-10G-SR
−7.3〜−1.2 dBm−9.9〜−1.0 dBm不要2.6 dB
10GBASE-LR
SFP-10G-LR
−8.2〜+0.5 dBm−14.4〜+0.5 dBm不要6.2 dB
10GBASE-ER
SFP-10G-ER
−4.7〜+4.0 dBm−15.8〜−1.0 dBm5.0 dB11.1 dB
10G ZR
SFP-10G-ZR
0〜+4.0 dBm−24〜−7 dBm11.0 dB24.0 dB
25GBASE-ER
SFP-25G-ER-I
−3.0〜+6.0 dBm−21.0〜−4.0 dBm10.0 dB18.0 dB

「必要な最小損失」は最大送信光出力 − 受信上限、「許容最大損失」は最小送信光出力 − 受信感度で求めています。伝送路の損失がこの範囲に収まれば、送信光出力が仕様の上限・下限のどちらに振れても受信できる計算です。

SR と LR は必要な最小損失が 0 以下、つまりパッチコードで直結しても受光過大にならない設計です。一方、ER には 5dB、ZR には 11dB の損失が必要です。1550nm のシングルモードファイバは損失が小さく(目安 0.22dB/km)、ZR ならおよそ 50km、ER でも 20km 強のファイバでようやくこの損失に届きます。

25GBASE-ER(1310nm 帯)も、必要な最小損失が 10dB あります。1310nm のファイバ損失(目安 0.35dB/km)で換算すると約 29km 分です。なお Cisco の SFP-25G-ER-I は、25G で使う際にホスト側の RS-FEC が必須とされています。

Cisco が指定する減衰量

Cisco は 10GBASE SFP+ のデータシートで、距離別の減衰器を次のように指定しています。

  • SFP-10G-ER:20km 未満では 1550nm 用 5dB の固定減衰器が必要
  • SFP-10G-ZR:5km 未満は 15dB、5〜25km は 10dB、25〜45km は 5dB の減衰器が必要

これはファイバの損失だけを前提にした目安です。実際の経路にパッチパネルや融着点が多ければ、そのぶん損失が増え、必要な減衰量は小さくなります。距離だけで機械的に決めず、次のように計算し、最後は実測で確かめるのが確実です。

計算してみる — ZR を 15km で使う

80km 用の 10G ZR を、15km の拠点間で使うケースです。上限側を確認するときは、損失を少なめに見積もるのがポイントです。損失が小さいほど、光は強く届くからです。

  • ファイバ損失(少なめ):15km × 0.2dB/km = 3.0dB
  • コネクタ損失(少なめ):4接続 × 0.1dB = 0.4dB
  • 最小損失の合計:3.4dB

最大送信光出力 +4.0dBm から 3.4dB を引くと、受信側には最大 +0.6dBm が届きます。受信上限の −7dBm を 7.6dB 上回るので、7.6dB 以上の減衰が必要です。手配しやすい値では 10dB を選びます。Cisco の目安(5〜25km は 10dB)とも一致します。

続けて、減衰器を入れた状態で下限側も確認します。今度は損失を多めに見積もります。

  • ファイバ損失(多め):15km × 0.25dB/km = 3.75dB
  • コネクタ損失(多め):4接続 × 0.5dB = 2.0dB
  • 減衰器:10dB
  • 最大損失の合計:15.75dB

最小送信光出力 0dBm から 15.75dB を引くと −15.75dBm。受信感度 −24dBm に対して約 8dB の余裕があり、上限・下限の両方を満たします。

減衰器の選び方・付け方

  • 受信側に付ける — 受信ポートの直前に付けると、受光レベルの測定や調整がしやすく、減衰器で生じる反射が送信側に影響しにくくなります。米国 Fiber Optic Association(FOA)の技術資料でも、受信側への取り付けが推奨されています。
  • 波長を合わせる — 減衰量が波長によって変わる製品があります。10G の ER・ZR には 1550nm 用、25GBASE-ER(1310nm 帯)には 1310nm 用を選びます。Cisco の ER の指定も「1550nm 用 5dB 固定減衰器」です。
  • ファイバ種別とコネクタを合わせる — シングルモード用で、LC/UPC など機器側と同じ研磨形状のものを使います。UPC と APC は混在できません。
  • 反射の小さいものを選ぶ — 減衰器の方式によっては反射が大きいものがあります。シングルモードでは反射減衰量の仕様も確認します。
  • 狙いは受信範囲の中央付近 — 受信感度ぎりぎりでも上限ぎりぎりでもなく、真ん中寄りに収まる減衰量を選びます。

ループバック試験にも注意

自機の送信を自機の受信へ戻すループバック試験は、伝送路の損失がほぼゼロの状態です。表のとおり ER・ZR では必要な損失を満たさないため、ループバックでも減衰器を入れてから試験します。Cisco も ZR について、受信パワーを −7dBm 未満に保つよう案内しています。

設置後は DDM で確かめる

最後は実測です。スイッチの DDM(デジタル診断モニタリング)で受信光レベル(Rx Power)を読み、受信範囲に収まっているかを確認します。上限に近ければ減衰量を増やし、感度に近ければ減らします。読み方は「DDM活用入門」で解説しています。

まとめ

  • 上限側の判定は最大送信光出力 − 最小損失 ≤ 受信上限。損失は少なめに見積もる。
  • 10G の SR・LR は仕様上、減衰器は不要。ER は 5dB、ZR は 11dB の損失が伝送路に必要。
  • Cisco の目安:ER は 20km 未満で 5dB、ZR は 5km 未満 15dB/5〜25km 10dB/25〜45km 5dB。
  • 減衰器は受信側に、使用波長に合ったものを。最後は DDM で確認する。

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参考資料

本記事は Cisco Systems が公開しているデータシート・設置ガイド(2026年9月時点)と一般的な技術情報に基づくもので、特定の構成での動作を保証するものではありません。送受信のパワー範囲はモジュールごとに異なるため、実際の値は各製品の仕様書をご確認ください。損失値は目安です。記載の社名・製品名は各社の商標です。