
生成AIの爆発的な普及に伴い、データセンターの熱対策として LPO vs CPO の選択が注目されています。トラフィックは800G、さらには1.6Tへと急速にシフトしていますが、高速化の代償として浮上しているのが「消費電力の増大」という深刻な課題です。
光モジュールの消費電力は、データセンター全体の電力コストを圧迫するだけでなく、冷却システムの限界をも脅かしています。この課題を解決する次世代技術として、現在業界を二分して議論されているのが、Linear Drive Pluggable Optics と Co-Packaged Optics です。
本記事では、これら2つの技術の仕組みとメリット・デメリットを比較し、エンジニアや調達担当者が今選ぶべきソリューションを解説します。
LPO vs CPO:次世代低消費電力ソリューションの比較
LPO(Linear Drive Pluggable Optics)は、従来の光モジュールから信号処理を行う「DSP(デジタル信号処理プロセッサ)」を取り除き、スイッチ側のASICで信号処理を直接行う技術です。「リニアドライブ」とも呼ばれます。
LPOの主なメリット
- 消費電力の大幅削減:DSPはモジュール電力の約50%を消費します。これを排除することで、飛躍的な省電力化が可能です。
- 低遅延(Low Latency):信号の再タイミング処理(リタイム)が不要になるため、AI学習において重要なレイテンシを最小限に抑えられます。
- 既存インフラとの互換性:OSFPやQSFP-DDといった従来の「プラガブル(抜き差し可能)」なフォームファクタを維持できるため、スイッチ機器の全面入れ替えが不要で、導入ハードルが低いのが最大の特徴です。
CPO(Co-Packaged Optics):究極の統合技術
CPOは、光エンジンをスイッチASICと同じ基板上に「共実装(パッケージング)」する技術です。電気信号が伝送される距離を極限まで短くすることで、伝送損失と消費電力を最小化します。
CPOの課題と将来性
物理的な距離が近いため電気効率は最強ですが、「メンテナンス性」に大きな課題があります。従来のモジュールのように故障したポートだけを交換することが難しく、光部品が故障した場合、高価なスイッチ全体を交換する必要が生じるリスクがあります。
そのため、CPOは超大規模なAIクラスターや、2027年以降の3.2T世代での本格採用が見込まれています。
シリコンフォトニクスが支えるコスト競争力

LPO vs CPO の進化を支えているのが、シリコンフォトニクス(SiPh)技術です。シリコンウェハ上に光回路を高密度に集積することで、部品点数を減らし、BOM(部品表)コストを改善します。
特にLPOにおいては、DSPを排除した分の信号品質を担保するために、シリコンフォトニクスによる高精度な変調器が重要な役割を果たします。
詳細については、過去のレポートもご参照ください。
👉 シリコンフォトニクス技術が光モジュール産業チェーンを再構築
【エンジニア向け】採用タイミングと最適化アドバイス
では、現時点でどちらを選択すべきなのでしょうか?データセンターの規模と目的別に推奨シナリオをまとめました。
- 中規模DC・既存設備のアップグレード:LPO推奨
既存の空冷ラックやスイッチ筐体を活かしつつ、電力コストを下げたい場合はLPOが最適解です。交換保守が容易であるため、運用チームの負担も軽減されます。 - 超大規模AI学習クラスタ・新規構築:段階的にCPOへ
数万個のGPUを接続するような将来のプロジェクトでは、電力密度が空冷の限界を超えるため、CPOと液冷技術の組み合わせが必須となるでしょう。
潤徳商事株式会社では、最新のLPO対応モジュールから、シリコンフォトニクス採用製品まで、お客様のロードマップに合わせた最適な光通信部材を調達・供給いたします。熱対策や省電力化の部材選定でお困りの際は、ぜひご相談ください。

